TOP › 特集記事 › 基礎解説 › プラスチック(樹脂)の基礎と種類

PLASTIC MATERIAL BASICS

プラスチック(樹脂)の
基礎と種類

熱可塑性・熱硬化性、結晶性・非晶性の違いを、身近なたとえと図でわかりやすく解説します。代表的な樹脂の特徴を知り、しゅう動部品の材料選びにつなげます。

材料名を覚える前に、樹脂の違いから。

01 / 樹脂の基礎から材料選定へ

樹脂の違いを知り、部品の材料選定へ

樹脂(プラスチック)は、高分子を主な成分とする材料です。本記事では、熱による変化、分子の並び方、代表的な材料の特長を解説します。温度指標の読み方と使用条件を確認し、歯車・軸受・シールなどのしゅう動(摺動)部品の材料選定につなげます。

02 / 熱可塑性・熱硬化性樹脂

熱を加えたときの変化で、違いをつかむ

樹脂は、熱を加えたときの変化や硬化の仕組みによって、大きく熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂に分けられます。氷と卵をイメージすると、それぞれの違いをつかみやすくなります。

溶けかけた氷のイラスト
氷をイメージ

熱可塑性樹脂

加熱すると軟らかくなり、冷やすと固まる。

固体加熱で
軟化・溶融
冷却で
固化

氷が溶け、冷やすと再び固まる様子を思い浮かべてください。熱可塑性樹脂も、加熱で軟らかくなり、冷却すると形を保ちます。材料に適した条件で、加熱・冷却による成形を行います。

代表例:PE、POM、PA、PC、PPS、PEEKなど
鍋で加熱される卵のイラスト
卵をイメージ

熱硬化性樹脂

硬化後は、再び加熱しても通常は溶けない。

成形前加熱などで
硬化
網目状の
構造へ

卵は、加熱して固まると生卵には戻りません。熱硬化性樹脂は、加熱や硬化剤などによる反応で分子同士が結びつき、網目状の架橋構造をつくります。硬化後は、熱可塑性樹脂のように再溶融しません。

代表例:PF(フェノール樹脂)、EP(エポキシ樹脂)など
氷と卵は、熱に対する変化をイメージするための例です。樹脂と同じ仕組みで変化するわけではありません。熱可塑性樹脂も繰り返しの加熱で劣化することがあり、PTFEのように一般的な溶融成形とは異なる方法を用いる材料もあります。

03 / 樹脂の分類

熱による変化と、分子の並び方で分類する

まず、熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂に分けます。次に、本記事では熱可塑性樹脂を、分子鎖の並び方から結晶性と非晶性に分けて見ていきます。

樹脂(プラスチック)

熱可塑性樹脂

加熱で軟化し、冷却すると固まる樹脂。さらに、分子鎖の並び方から結晶性・非晶性に分けます。

PEPOMPAPCPEEK

熱硬化性樹脂

硬化反応で架橋構造をつくる樹脂。硬化後は、再び加熱しても通常は再溶融しません。

PF|フェノール樹脂EP|エポキシ樹脂UP|不飽和ポリエステル

結晶性:整列した部分がある実際には、結晶部と非晶部が共存

分子の並び方イメージ図
分子鎖の規則的な並びを表す青色の模式図

分子鎖の一部が規則的に並ぶ結晶部を持つ樹脂です。「半結晶性」とも呼ばれ、結晶部が融ける融点(Tm)があります。

PEPPPOMPAPBTPPSPEEKPTFE

非晶性:規則的な整列が少ない規則的な結晶部をほとんど持たない

分子の並び方イメージ図
分子の不規則な並びを表すオレンジ色の模式図

規則的な結晶部をほとんどつくらない樹脂です。明確な融点はなく、ガラス転移温度(Tg)が性質の変化を読む手がかりになります。

PSABSPMMAPCPESPPE

熱可塑性樹脂を、分子の並び方でさらに分類

結晶性樹脂と非晶性樹脂を比較するときのポイント
確認する項目結晶性樹脂非晶性樹脂
分子構造結晶部と非晶部が共存します。規則的な結晶部をほとんど持ちません。
温度指標非晶部に関係するTgと、結晶部が融けるTmを区別します。明確なTmはなく、Tg付近の特性変化を確認します。
検討のポイント結晶化や成形収縮、吸水などによる寸法・物性の変化を確認します。Tg付近の剛性変化や、薬品・応力による影響などを確認します。
分類だけでは、性能は決まりません。透明性、耐衝撃性、耐薬品性、摩擦・摩耗などは、樹脂の種類、配合、成形条件、使用環境によって変わります。PI(ポリイミド)やPU(ポリウレタン)のように、熱可塑性・熱硬化性の種類がある材料も、製品ごとの確認が必要です。

04 / 温度指標と弾性率

Tg・Tm・連続使用温度は、何が違う?

材料資料にある温度の数字は、何を測定した値かによって意味が変わります。TgやTmは、部品を長期間使える上限温度をそのまま示すものではありません。

Tg|ガラス転移温度

非晶部の分子鎖の動きやすさが変化する温度の目安です。剛性などの特性変化を考える手がかりになります。

Tm|融点

結晶性樹脂の結晶部が融ける温度です。非晶性樹脂には、結晶部の融解に対応する明確な融点がありません。

連続使用温度

所定の評価条件に基づく、長期使用時の耐熱性の指標です。対象グレードや評価方法を確認し、実際の部品の使用可否は別途検討します。

温度データを読むときは「指標・グレード・評価条件」を確認
温度指標示していること選定時に確認すること
Tgガラス転移に伴う特性変化測定方法・熱履歴などの条件と、使用温度で必要な剛性
Tm結晶部の融解材料の種類と測定条件。使用上限温度や成形温度とは区別
連続使用温度長時間使用時の耐熱性の評価評価方法・時間・対象物性と、部品の荷重・環境・必要寿命

樹脂の弾性率は、温度でどう変わる?

弾性率は、材料の変形しにくさを表す指標です。下の図は、結晶性・非晶性樹脂それぞれの温度による変化を、別々の模式図で示しています。

結晶性樹脂の例

結晶性樹脂の弾性率と温度の関係の模式図温度上昇とともに弾性率が変化し、ガラス転移温度Tg付近で低下する。さらに融点Tm付近で大きく低下する例。数値や実測曲線は示していない。TgTm低い温度高い弾性率
Tg付近では非晶部に関係する変化が生じ、Tm付近では結晶部が融けます。Tgを超えた場合も、結晶部が材料の性質に影響します。

非晶性樹脂の例

非晶性樹脂の弾性率と温度の関係の模式図温度上昇に伴い、ガラス転移温度Tg付近で弾性率が大きく低下する例。結晶部の融解に対応する明確な融点は示さない。数値や実測曲線は示していない。Tg低い温度高い弾性率
Tg付近で、弾性率が大きく変化することがあります。明確な融点はなく、必要な剛性を保てる温度や使用条件を確認します。

模式図は、変化の考え方を示す概念図です。曲線の高さ、温度位置、変化の幅・形状は、材料やグレード、測定方法によって異なります。左右の図から材料同士の性能順位や使用上限温度を比較することはできません。

温度の数字だけで使用可否を決めない。荷重、使用時間、摩擦による発熱、相手材、潤滑、薬品などを合わせて確認します。材料名が同じでも、配合やグレードによって適した条件は変わります。
しゅう動部品の材料選定で確認する使用条件を見る

05 / 材料群の位置づけ

汎用樹脂・エンプラ・スーパーエンプラの違い

樹脂は、一般に使われる用途や要求特性から、汎用樹脂、エンジニアリングプラスチック(エンプラ)、スーパーエンプラなどの材料群でも紹介されます。材料群の呼び方は、候補を知るための入口として使います。

汎用樹脂

身近な成形品などに

軽さ、成形性、外観、コストなどを用途に合わせて検討する材料群です。

PEPPPSABSPMMA
エンプラ

機械・機構部品などに

強度・剛性、寸法、温度、吸水などの条件を確認し、機械部品への適用を検討します。

POMPAPBTPCPPE系
スーパーエンプラ

高温・厳しい環境などに

高温で求められる物性や、耐薬品性などを確認し、使用条件に適した材料を検討します。

PPSPESPEEKPAI

ふっ素樹脂は、求める機能から

PTFE・PFA・ETFEなどは、耐薬品性、摩擦、非粘着性、成形方法なども重要です。強度や耐熱性の一つの順位だけで選ばず、用途に必要な機能を確認します。

熱硬化性樹脂は、基材・配合も確認

フェノール樹脂系の積層材料などは、樹脂に加えて基材や配合、硬化条件も特性に関係します。部品の形状や製造方法を含めて検討します。

材料群の区分は、性能順位を示すものではありません。スーパーエンプラであっても、すべての用途で摩耗やコストに有利とは限りません。材料群の境界や呼び方にも違いがあるため、最終的にはグレードごとのデータと使用条件を確認します。

06 / 代表的な樹脂の特長と注意点

部品の材料選定で押さえたい、9つの樹脂

ここでは、しゅう動部品や機構部品の検討を意識した代表例を紹介します。樹脂のすべての種類を網羅した一覧ではありません。特長と注意点をセットで見ながら、用途に合う候補を考えます。

結晶性・熱可塑性

PEポリエチレン

軽く、吸水が少ない樹脂。身近な成形品から、種類に応じた機械用途まで使われます。

特長
耐水性・耐薬品性を活かす用途で検討できます。
注意点
高温や持続荷重での変形を確認します。分子量や密度の違いによっても性質が変わります。
分子構造の補足

代表的な繰り返し構造:[–CH₂–CH₂–]ₙ
ₙは、構造が繰り返されることを示します。

結晶性・熱可塑性

POMポリアセタール

歯車など、繰り返し動く機構部品で使われる樹脂です。

特長
剛性や繰り返し荷重への耐性を活かし、しゅう動部品で検討できます。
注意点
薬品との相性、特に酸への耐性や、成形収縮を確認します。
分子構造の補足

単独重合体の代表構造:[–CH₂–O–]ₙ
共重合体では構造が異なります。

結晶性・熱可塑性

PAポリアミド(ナイロン)

PA6・PA66などの種類があり、機械部品に広く使われる樹脂です。

特長
靱性(力を受けたときの粘り強さ)や、耐摩耗性を活かす用途で検討できます。
注意点
吸水による寸法・物性の変化を確認します。評価時の水分状態も重要です。
分子構造の補足

特徴的な結合:–C(=O)–NH–(アミド結合)
PA6、PA66などで分子構造が異なります。

結晶性・熱可塑性

PPSポリフェニレンサルファイド

耐熱性・耐薬品性が求められる部品や、電気・電子部品で検討される樹脂です。

特長
耐熱性・耐薬品性や、吸水の少なさを活かせます。
注意点
耐衝撃性などの特性は、充填材の種類や配合によって異なります。
分子構造の補足

代表的な繰り返し構造:[–p-C₆H₄–S–]ₙ
芳香環と硫黄を含む結合が特徴です。

結晶性・熱可塑性

PEEKポリエーテルエーテルケトン

高温下で機械特性が求められる部品などで検討される、高機能樹脂です。

特長
耐熱性と機械特性を合わせて検討する用途で候補になります。
注意点
材料・加工コストや成形条件、必要な性能に対する適切なグレードを確認します。
分子構造の補足

芳香環に、エーテル結合とケトン結合を含む構造です。

結晶性・熱可塑性

PTFEポリテトラフルオロエチレン

低摩擦性・非粘着性を特徴とする、ふっ素樹脂です。

特長
低摩擦性や耐薬品性を活かす用途で検討できます。
注意点
荷重下の変形や摩耗を確認します。一般的な溶融射出成形とは異なる加工方法を用います。
分子構造の補足

代表的な繰り返し構造:[–CF₂–CF₂–]ₙ
炭素とふっ素を含む構造です。

非晶性・熱可塑性

PCポリカーボネート

透明性と耐衝撃性を活かす用途で使われる樹脂です。

特長
透明な部品や、衝撃への耐性が求められる用途で検討できます。
注意点
薬品と応力が重なることによる割れや、表面の傷などを確認します。
分子構造の補足

特徴的な結合:–O–C(=O)–O–(カーボネート基)

非晶性・熱可塑性

PESポリエーテルサルホン

耐熱性と寸法安定性が求められる用途で検討される樹脂です。

特長
高温で必要な剛性や、寸法安定性を重視する用途で候補になります。
注意点
溶剤との相性、使用温度での物性、材料・加工コストを確認します。
分子構造の補足

芳香環、エーテル結合、スルホン基(–SO₂–)を含む構造です。

熱硬化性

PFフェノール樹脂

硬化反応で網目構造をつくる樹脂。成形材料や、繊維基材を組み合わせた積層材料などに使われます。

特長
耐熱性に加え、基材や配合による機械特性・しゅう動特性を検討できます。
注意点
配合、基材、硬化条件によって性質が変わります。硬化後は再溶融しません。
分子構造の補足

フェノール環同士が–CH₂–などで結びつく、網目状の構造として表せます。単一の繰り返し式だけでは表せません。

グレードとは、配合や特性の異なる材料の種類です。ここで示す特長は一般的な検討の入口であり、特定製品の性能を保証するものではありません。化学構造も代表例で、共重合体・配合材・硬化樹脂などは構造や特性が異なります。

07 / 使用条件から材料候補へ

しゅう動部品の材料選定は、使う条件から

樹脂の種類を知ったら、実際の部品の使われ方に当てはめます。摩擦・摩耗や寿命は、材料名だけでは判断できません。温度、荷重、速度、相手材、潤滑などを合わせて確認します。

材料選定の前に確認したい使用条件
確認する項目関係する特性具体的に確認すること
温度・時間耐熱性、剛性、寸法変化通常時と最高・最低温度、連続・間欠使用、発熱、必要寿命
荷重・面圧強度、変形、クリープ荷重の大きさ・方向、接触面積、持続荷重、繰り返し荷重
速度・動き方摩擦、摩耗、発熱速度、回転・往復運動、停止時間、起動の頻度
相手材・潤滑摩擦、摩耗、相手材への影響相手材の材質・表面状態、油・水・無潤滑、異物の有無
水分・薬品吸水、耐薬品性、物性変化接触する流体・薬品、濃度、温度、湿度、洗浄条件
形状・寸法・数量成形性、寸法精度、製造方法形状、厚み、寸法・公差、組み付け、数量、加工方法

クリープは、荷重がかかった状態で時間とともに変形が進む現象です。面圧は、接触部分の単位面積あたりにかかる力を指します。

材料・形状・評価を組み合わせて検討する

STEP 01 / 条件を確認

用途と困りごとを把握

使用条件、現在の材質、摩耗や交換頻度などを確認し、部品に必要な性能を明確にします。

STEP 02 / 候補を検討

材料・形状・製造方法を検討

材料の配合、部品形状、寸法精度、成形・加工方法、数量を合わせて候補を考えます。

STEP 03 / 性能を確認

使用条件を想定して評価

必要な評価項目を検討し、摩擦・摩耗、変形、寸法などの結果を材料や設計の検討へ反映します。

材料候補を考える例:低摩擦を重視する用途ではPTFE系、機構部品ではPOM・PA系、高温用途ではPPS・PEEK系などが候補になります。フェノール樹脂系の積層材料は、基材や配合を含めて検討します。いずれも使用条件と評価結果を確認して選定します。
S-BEAR P9040の商品ページに掲載された樹脂軸受部品の写真
掲載製品例:S-BEAR P9040

材料名から、具体的な部品の検討へ

ベース樹脂だけでなく、配合と成形方法も見る

例えば、商品データベースのS-BEAR P9040は、PFをベースとした高温用のしゅう動材料です。同じベース樹脂でも、製品グレードごとの用途や成形方法を確認することが、具体的な部品の検討につながります。

P9040の製品情報・使用条件を見る

STARLITE / MATERIALS × SHAPE × EVALUATION

使用条件から、樹脂部品の材料選定を相談する

スターライト工業は、材料設計・成形加工・評価を組み合わせ、用途に応じた材料候補、部品形状、評価方法を検討します。材料名やブランドが決まっていない段階でもご相談いただけます。

用途、使用温度、荷重・面圧、速度、相手材、潤滑、現在の摩耗や交換頻度などを、分かる範囲でお知らせください。現在の部品でお困りの現象から、検討を始められます。

樹脂部品の材料選定を相談する
掲載内容は、樹脂の基礎と材料選定の考え方を紹介するものです。特性は製品グレード、試験方法、成形条件、使用環境などによって異なります。個別部品への適用は、使用条件と必要な評価を確認したうえで判断します。